扁桃炎
のどの突き当りに口蓋垂(のどちんこ)があり、その左右にあるのが、「口蓋扁桃」です。
一般に「扁桃炎」とは、左右の口蓋扁桃の発赤、腫脹をともなう炎症を指します。
なお、口蓋扁桃は6歳頃に最も大きくなり、その後は年齢とともに徐々に小さくなります。
扁桃炎の種類
急性扁桃炎
ウイルスや細菌感染による炎症で、両側の口蓋扁桃の発赤、腫脹がみられます。強い炎症があると白苔がつく場合もあります。
EBウイルス感染に伴う伝染性単核球症では、発熱や扁桃炎症状が続いて、肝機能障害を伴うことがあります。
細菌感染が重症化すると扁桃周囲膿瘍を形成することがあり、膿瘍が進行すると呼吸困難を生じたり、深頸部膿瘍から気道閉塞をきたして命に関わることがあるので、早急に耳鼻咽喉科での診察と治療を要します。
慢性扁桃炎
扁桃炎を繰り返したり、慢性化している状態で、扁桃摘出術が行われる場合があります。
病巣感染症(病巣扁桃)
扁桃における免疫反応が、IgA腎症や掌蹠膿疱症などの原因になっていることがあり、IgA腎症や掌蹠膿疱症の治療として扁桃摘出術を行う場合があります。
睡眠時無呼吸症候群
小児では扁桃肥大やアデノイド増殖症が、睡眠時無呼吸症候群の原因になり、陥没呼吸などを伴う場合があります。扁桃摘出術やアデノイド切除術が、小児の睡眠時無呼吸症候群には極めて有効です。
扁桃炎の原因
ウイルスや細菌の感染が原因で、原因となるウイルスや細菌によって、症状や治療法が異なります。
アデノウイルス、ライノウイルス、単純ヘルペスウイルス、EBウイルスや、溶連菌、黄色ブドウ球菌など、さまざまなウイルスや細菌が原因になります。
扁桃炎の主な症状
扁桃炎の主な症状は、以下の通りです。食事がとれない嚥下痛がある場合は直ちに耳鼻咽喉科を受診してください。呼吸困難がある場合は、救急車を呼んで対応してください。
- 扁桃の腫れ、飲み込む時の痛み
- のどの違和感
- 発熱
- 倦怠感
- 食欲不振
- 口臭
扁桃炎の治療
ウイルス性の扁桃炎に対しては、発熱や炎症などへの対症療法として解熱鎮痛薬を中心とした薬物療法を行います。
細菌性の扁桃炎に対しては、抗菌薬を使用し、とくに溶連菌感染には10日間の投薬加療を行います。
扁桃周囲膿瘍を形成している場合は、切開をして排膿処置をする必要があります。また、年に何度も扁桃炎を繰り返す場合には、扁桃摘出術がすすめられます。
扁桃炎の感染経路と予防方法
扁桃炎は、ウイルスや細菌が空気や飛沫、接触などによって感染することで発症します。
そのため、手洗いやうがい、マスクの装着などによる予防が有効です。また、免疫力が低下していると感染しやすくなるため、生活習慣の改善も重要です。
具体的には、バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレスの解消などに努めて、喫煙や過度の飲酒は避けるようにしてください。
咽頭炎・喉頭炎
咽頭炎・喉頭炎の種類
急性喉頭蓋炎
細菌感染による急性炎症によって、喉頭蓋が腫脹し、急激に呼吸困難が進行し命にかかわることがある疾患です。
嚥下痛がひどくて食事ができなかったり、前頸部の腫脹感などがある場合は、直ちに耳鼻咽喉科を受診してください。呼吸困難がある場合は救急車を呼んで対応してください。
命にかかわるような重症例では、呼吸ができるように緊急で気管切開術が必要になる場合があります。
急性咽頭炎・喉頭炎
ウイルスや細菌の感染によって急性炎症が生じます。
のどの痛み、発熱、首のリンパ節の腫れなどの症状が見られます。
急性声門下喉頭炎(仮性クループ)
3歳以下の小児に多くみられるウイルス性疾患で、声門下の粘膜が腫脹して犬吠様咳嗽が認められます。重症例では酸素吸入やステロイド薬の投与が必要になりますので、小児科にご相談ください。
咽頭炎・喉頭炎の主な症状
咽頭炎・喉頭炎の主な症状は、以下の通りです。中耳炎がなくても耳に痛みが放散することがあります。呼吸困難や嚥下困難の症状があるときは、直ちに耳鼻咽喉科を受診してください。
- のどの痛み、腫れ、ヒリヒリ感
- 食べ物を飲み込む時ののどの痛み
- 咳、痰
- 発熱
- 倦怠感
- 耳の痛み
- 呼吸困難
咽頭炎・喉頭炎の治療
ウイルス感染に対して、対症療法として解熱鎮痛薬を中心とした薬物療法を行い、細菌感染に対して、抗菌薬を使用します。
うがいや十分な安静・栄養補給なども有効です。また、部屋を加湿することで、咳やのどの痛みなどの症状の軽減が期待できます。
嚥下痛が強く、食事がとれない場合は、入院の上点滴加療が必要です。呼吸困難がある重症例では救命のために気管切開術が必要になる場合があります。